ICT支援員ハンドブック p.57 ケーススタディ2 新しい校務システム
想定事例
新しい校務システムが導入され、そのシステムの操作方法の研修会を開催した。しかし、日々の利用はなかなか進まず、特定の先生によるデータ入力はあるものの、全校で徹底ができていない中、学期末となった。通知表の作成等のため、これまで入力していなかった先生達も使うことになったが、操作方法をほとんど忘れており、多くの先生達から同様の質問を受け、ICT支援員の勤務時間内のほとんどを個別の先生への操作方法の説明に費やすことになった。ある日、A先生から「データ入力については、家でやりたい。できるようにならないか。」と相談され、校務システムに一括データ入力ができるよう表計算のシートを作成し、そのファイルを学校至急のUSBメモリに保存して渡した。A先生は、テスト等の資料とUSBメモリを家に持ち帰りデータ入力をし、そのUSBメモリを翌日学校に持ってきた。そのUSBメモリを受け取り、校務システムに一括登録することで、なんとか通知表のためのデータ入力期日には間に合うことができた。
i その問題が起こった原因
まず「その問題」とは何かだが、想定事例で明確に挙げられているのは「ICT支援員の勤務時間内のほとんどを個別の先生への操作方法の説明に費やすことになった」くらいだ。後半のA先生の話の結論は「間に合うことができた」であり、別に問題だとは明示的に書かれていない。ただ「だから後半部分はこれでよいので前半部分のみ考える」ではなく、後半部分も問題だと言いたいのだろう。出題側が問題としたい候補は以下だろう:
- 新校務システムの日々の利用が進まなかった。
- 学期末に、これまで新校務システムを使っていなかった先生たちが操作方法をほとんど忘れていた。
- ICT支援員の勤務時間内のほとんどを個別の先生への操作方法の説明に費やすことになった。
- 校務システムに一括データ入力ができるよう表計算のシートを作成し、そのファイルを学校支給のUSBメモリに保存して渡した。
- A先生は、テスト等の資料とUSBメモリを家に持ち帰りデータ入力をし、そのUSBメモリを翌日学校に持ってきた。
「1. 新校務システムの日々の利用が進まなかった。」の原因
- 新校務システムを導入する理由・意義を先生に納得させることができなかった。
- 新校務システムの操作方法の研修会がわかりにくかった。
- 先生方が忙しすぎて、新しいことを覚えて取り組む余裕がなかった。
想定事例中に根拠があるのは1.で、操作方法の研修しかしておらず、理由・意義の説明はなかったと読み取れる。
「2. 学期末に、これまで新校務システムを使っていなかった先生たちが操作方法をほとんど忘れていた。」の原因
- マニュアルや操作研修のビデオなど、後から見返せる資料を用意しなかった。
「3. ICT支援員の勤務時間内のほとんどを個別の先生への操作方法の説明に費やすことになった。」の原因
- マニュアルを用意しなかった。
- 全部ICT支援員に頼るのではなく、先生同士で教え合う学校風土が出来ていなかった。
- 日々の利用が進んでいなかったので、学期末に問い合わせが殺到した。→ 問題1.に帰結。
「4. 校務システムに一括データ入力ができるよう表計算のシートを作成し、そのファイルを学校支給のUSBメモリに保存して渡した。」の原因
「5. A先生は、テスト等の資料とUSBメモリを家に持ち帰りデータ入力をし、そのUSBメモリを翌日学校に持ってきた。」の原因
もしUSB メモリを紛失したら大変なことになる、といいたいのかもしれない。しかしそれはテスト等の資料を紛失しても同じだ。USB メモリの持ち帰りがダメならテスト等の資料の持ち帰りもダメにしないといけない。したがってICT の問題ではなく、昔から存在する問題。
- テスト等の資料もUSB メモリも家に持ち帰ってはならない、というルールがあるとする(ないなら問題ないことになる)。そのルールが守れなかった、A先生のモラル不足。
- ルールを知らずにA 先生にUSB メモリを持ち帰らせたICT 支援員の無知。
- ルールを知っているにも関わらずA 先生にUSB メモリを持ち帰らせたICT 支援員のモラル不足。
ii 問題が起こらないようにするための対策
「1. 新校務システムの日々の利用が進まなかった。」の対策
- 操作説明だけでなく、新校務システムを導入する理由・意義を先生に理解させる。
- 新校務システムの操作方法の研修会を改善する。
- 先生方の忙しさをなんとかして軽減する。
「2. 学期末に、これまで新校務システムを使っていなかった先生たちが操作方法をほとんど忘れていた。」の対策
- マニュアルや操作研修のビデオなど、後から見返せる資料を用意する。
「3. ICT支援員の勤務時間内のほとんどを個別の先生への操作方法の説明に費やすことになった。」の対策
- マニュアルを用意する。
- 全部ICT支援員に頼るのではなく、先生同士で教え合う学校風土を醸成する。
- 問題1.を解決し日々の利用を進めることで、学期末に問い合わせが殺到することを防ぐ。
「4. 校務システムに一括データ入力ができるよう表計算のシートを作成し、そのファイルを学校支給のUSBメモリに保存して渡した。」の対策
- VPN のような安全なネットワーク接続環境が用意することで、USB メモリがなくとも家で仕事できるようにする。
- A 先生に日々計画的に新校務システムを使ってもらう。
- A 先生の忙しさをなんとかして緩和する。
「5. A先生は、テスト等の資料とUSBメモリを家に持ち帰りデータ入力をし、そのUSBメモリを翌日学校に持ってきた。」の対策
- テスト等の資料もUSB メモリも家に持ち帰ってはならない、というルールがあるとする(ないなら問題ないことになる)。A先生にそのルールを守らせる(研修、誓約書、懲罰など)。
- ルールを知らずにA 先生にUSB メモリを持ち帰らせたICT 支援員にもっと勉強させる。または別のICT 支援員に変える。
- ルールを知っているにも関わらずA 先生にUSB メモリを持ち帰らせたICT 支援員にルールを守らせる(研修、誓約書、懲罰など)。または別のICT 支援員に変える。