B領域で問われるICT支援員の倫理

ICT支援員認定試験のB領域は課題への解答を動画作成し提出するユニークな形式だ。試験中にその場で作成するのではなく、自宅などで作成し5日以内に提出することになる。

そこで気になってくるのが不正への対策だ。最近はコロナ禍もあってIBT(Internet Based Testing)やWBT(Web Based Testing)と呼ばれる、自宅で自分のPC でテストを受けられる試験が増えている。IBT/WBT では通常、監督者がリモートカメラで監視することで不正を防いでいる。趣味や自己研鑽目的の検定では監督者がいないこともあり、その場合は受験者の倫理に任されている。

ICT支援員認定試験は趣味や自己研鑽目的の検定にはあたらないが、B領域はその形式ゆえ、監督者による監視はない。その気になれば替え玉、カンニング、他人に相談、ウェブで検索などやりたい放題で、受験者の倫理に任されている。しかしその倫理というのも、受験者の考えによって幅があると思われる。例えば、以下のような問いにどう答えるか、人によって結構違うだろう。

【例題】
あなたはICT支援員認定試験を受験し、B領域の解答動画を作成することとなった。以下の対応のうちICT支援員として【適切と考えられるもの】をすべて選び、チェックしなさい。

□1. ライセンスカード作成用に写真を提出するつもりはなく、不正してもばれるはずがないので、動画作成も含め解答はすべて後輩に命令して替え玉で行わせた。
□2. 解答の文章は後輩に考えさせたが、その回答を自分で読み上げる動画の作成は自分で行ったので、ライセンスカードの写真と同一人物か確認されても問題ない。
□3. Yahoo!知恵袋で回答を募集し、皆の意見を結集させて解答を作成した。このように多くの人と協同してよりよいものを作っていくのは、よいことである。
□4. 解答は自分で考えたが、できるだけよい解答にするため、友人に確認してもらいそのアドバイスに従って内容を改善した。
□5. 同じく試験を受けてA領域に合格した友人と問題をいっしょに考え、意見交換した。友人もB領域の問題内容を知っているので、試験内容の漏えいには当たらず、何ら問題ない。
□6. 解答は自分で考え、自分で動画撮影したが、途中で余計な音が入ってしまった。動画から不要部分を削除することは、動画編集に慣れている友人にやってもらった。
□7. 時間やコストの関係で動画提出という試験形式になっているが、本来は監督者のもとその場で回答すべきものであるので、ウェブ検索も一切行わずに自分の頭だけで解答を作成する。

もちろん、外向けには不正などしないと回答しても、実際には不正をするかもしれない。ばれないとわかっていれば、人間の心は弱いものだ。上記例題であれば1番の完全替え玉は明確にNG でも、自分に都合のよい解釈をして4番くらいのことをやる人は相当いる(いた)だろう。

今のところ、試験の実施要項などにはB領域の解答作成にあたってどこまでが許され、どこまでが許されないかは明確に示されていない。受験者の倫理に任せるということなのだろうが、ウェブ検索もしてはならないのかどうかは私も迷っているところなので、B領域出題時にその点が示されるのかは気になっている*1

*1:B領域出題時に示されたとしても、それはA領域合格者だけに伝えられる内容なので、公開できないのだが。